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歴史のなかで強者は弱者を侵し、追い詰め、その「存在」を危うくさせた。<br />人間は宿命のような争いを生命を宿す地球上で繰り返してきた。<br />いまなお、地球のどこかで愚かな争いの行為が行われている。<br />恐ろしいことに強者はそのことを正義と信じていることである。<br />また、理屈をつけて正義であろうとする。戦火が混じり、血が流れ、<br />街が破壊され、人々は逃げまどう。飢えが襲い、略奪が始まり、<br />女性は犯される。強者の意のまま強制連行が行われ、<br />また戦乱の地から人々は他の地に少しでもまともな生があることを信じて<br />国境を越える。故郷を捨てざるを得ない苦い生を求める。<br />人類の愚行の一つがこの北海道でも行われて来た。<br />強者はわがもの顔で先住民族であるアイヌを制圧し、無視し、<br />あって無きが如く、コミュニティの片隅に追いやったばかりでなく<br />労働を強いた。それは暴力と強制・家族との分断を伴うものであった。<br />やがて、民族としての言語・宗教・風俗・土地をも奪う<br />非道なものとなって行く。<br />民族の誇りも、カムイへの祈りも強い圧力によって消そうとした。<br />人間(アイヌ)の誇りを失うことは大変な危機であった。<br />だから、そうはさせじと前を見続け、必死に生きて民族の光明を<br />見つけ求めようとした。<br />しかしその虐げられた時の流れは長かった。気の遠くなるような<br />長い時間であった。ようやく近代日本と言われる明治時代になって<br />旧土人保護法という差別法を国家は作ったが何ら変わることなく<br />近代化され行く日本社会では孤児の如く見向きもされず、歴史の<br />記録にもあるか、無しかの存在、「日本人」の名を与えられ、<br />日本人社会の中で生きて行かざるを得なかった。<br /><br /> 目次<br />[1]息吹よふたたび[2]アイヌネノアンアイヌ<br />[3]金成太郎の輪郭[4]新聞人伊東正三と金成太郎<br />[5]書かれたことと語られたこと[6]アイヌの殉教者良武太<br />[7]語り人、モナシノウク[8]バチラーとその使徒たち<br />[9]三人のローマ字講師[10]人間知里幸恵・愛<br />[11]知里幸恵・真志保の故郷観[12]チヤランケ<br />[13]アイヌは滅びず、命の叫び!![14]ハポ(母)の初恋の人<br />[15]つつじの下の墓標<br />[16]アイヌの誇りだけは・・・・・・金成アシリイロの末路<br />[17]「かわうそ」と言われた男[18]祈りの民<br />[19]タンネカムイ(蛇)のこと[20]祖は日高にあり<br />[21]アイヌ語地名を愛する<br />[22]バチラーの名訳か?「イエス我ヲ愛ス(イエス エンオマプ)」<br />[23]いま、教育の現場で<br />・・・
・富樫 利一
・版型:四六判
・総ページ数:184
・ISBNコード:9784779127168
・出版年月日:2021/04/05
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息吹よふたたび / 彩流社
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